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住宅ローン控除の仕組みと手続き 中古マンションで使える条件と金額
住宅ローン控除(住宅ローン減税)の仕組みを解説。令和8年度税制改正による延長・拡充を反映。中古マンションへの適用条件、控除額の計算、確定申告の手順まで整理。
最終更新: 出典: 国土交通省 不動産成約価格情報 / BayMap独自集計
住宅ローンを組んでマンションを購入した場合、一定の条件を満たせば所得税・住民税が毎年還付される制度があります。「住宅ローン控除」または「住宅ローン減税」と呼ばれるもので、購入後の家計に対して無視できない恩恵をもたらします。2022年の税制改正で内容が大きく変わり、さらに令和8年度(2026年度)税制改正大綱で適用期限の5年延長と既存住宅への拡充が盛り込まれました。特に中古マンションは新築と異なる条件が設けられており、物件の省エネ性能によって借入限度額や控除期間が変わるため、正確に理解しておくことが必要です。
住宅ローン控除の基本的な仕組み
住宅ローン控除は、年末時点のローン残高に一定の控除率を掛けた金額を、その年の所得税から差し引ける制度です。差し引いた後に所得税で引き切れない分は、住民税からも控除されます(上限あり)。
2022年の改正で控除率は1.0%から0.7%に引き下げられました。2021年以前に購入した場合との比較で「改正後は損をした」と感じる人もいますが、同時に控除期間が13年に延長(改正前の新築は特例として13年でしたが、改正後は全ての住宅で統一)されたため、総還付額で見ると一概に不利にはなっていません。
控除の上限は、ローン残高ではなく「借入限度額」によって設定されています。この借入限度額が物件の種別(新築か中古か、省エネ性能のランクなど)によって異なり、中古マンションは新築に比べて上限が低く設定されています。
中古マンションへの適用条件
2022年改正後、中古住宅に住宅ローン控除を適用するための主な条件は以下の通りです。
引渡しを受けた物件が自分の居住用であること、そしてローンの返済期間が10年以上であることは基本的な要件です。これに加え、中古住宅固有の条件として、新耐震基準に適合していることが求められます。具体的には、1982年(昭和57年)1月以降の建築確認を受けた物件(いわゆる「新耐震」)が対象です。
それ以前の旧耐震物件については、耐震基準適合証明書または既存住宅売買瑕疵保険への加入によって、適合していることを証明できれば控除の対象になります。証明書の取得には検査が必要で、費用は数万円程度かかります。築年数要件(以前は木造20年・RC造25年以内)は2022年の改正で撤廃されたため、旧耐震基準の建物でも耐震基準適合証明書があれば控除を受けられるようになりました。
床面積は50㎡以上が原則ですが、合計所得金額が1,000万円以下の方は40㎡以上でも対象となります。令和8年度改正により、この40㎡以上への緩和措置は既存住宅にも適用されるようになりました(ただし子育て世帯等の上乗せ措置利用者は50㎡以上)。
借入限度額と控除期間
2022年改正時点の基本枠組み
中古マンション(一般の既存住宅)の借入限度額は2,000万円、控除期間は10年間です。新築・省エネ住宅の借入限度額(最大5,000万円)と比べると、控除の恩恵は限定的です。
借入限度額2,000万円・控除率0.7%で計算すると、年間の最大控除額は14万円です。ただし実際には、年末のローン残高が2,000万円を下回れば、その残高に0.7%を掛けた金額が上限になります。たとえばローン残高が1,500万円であれば、その年の控除額の上限は1,500万円×0.7%=10.5万円です。
一般の既存住宅であれば、10年間で最大140万円の税負担軽減になる計算ですが、実際には所得税・住民税の金額が控除額の上限になるため、納税額が少ない場合は満額を享受できません。
令和8年度税制改正による延長・拡充(2026年入居分から)
令和8年度税制改正大綱で、住宅ローン控除は大幅に延長・拡充されました(国土交通省 2025年12月26日公表)。主なポイントは以下の通りです。
適用期限が5年間延長され、令和8年(2026年)1月1日から令和12年(2030年)12月31日までに入居した場合に適用可能になりました。
省エネ性能の高い既存住宅(長期優良住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅に該当する中古住宅)については、借入限度額が引き上げられ、控除期間も13年間に拡充されます。子育て世帯・若者夫婦世帯にはさらに借入限度額の上乗せ措置が講じられます。
一方、一般の既存住宅(省エネ基準に適合しないもの)は従来通り借入限度額2,000万円・控除期間10年間です。中古マンションの購入を検討する際は、物件の省エネ性能が控除額に直結するため、省エネ基準への適合状況を確認することが重要です。
なお、令和10年(2028年)以降に建築確認を受ける新築住宅で省エネ基準に適合しないものは住宅ローン控除の対象外となります。また、災害レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域等)内の新築住宅も令和10年以降は対象外です。
所得税・住民税との関係
住宅ローン控除は「税額控除」であり、課税所得ではなく「税額そのもの」から差し引かれます。そのため節税効果は直接的で、たとえば所得税が年間15万円であれば、最大15万円が還付される計算です。
引き切れない分は住民税から控除されますが、住民税からの控除上限は「前年度課税所得×5%(最大97,500円)」に制限されています。所得が低く所得税が少ない世帯では、控除を使い切れないケースもあるため、自分の所得と税額から逆算して実質的な恩恵を見積もることが重要です。
年収500万円のサラリーマン(独身・扶養なし)の場合、所得税の目安は20万〜30万円程度です。借入2,000万円・控除額14万円であれば所得税内で収まるため、ほぼ満額の恩恵を受けられます。一方、年収350万円の場合は所得税が10万円前後に収まることもあり、残りは住民税から控除するか、一部が控除しきれなくなります。
手続きの流れ
住宅ローン控除を受けるためには、購入翌年に確定申告が必要です。会社員でも初年度だけは自分で申告しなければなりません。2年目以降は会社の年末調整で処理されます。
申告に必要な書類は、住宅借入金等特別控除額の計算明細書(税務署で入手またはe-Taxで作成)、登記事項証明書(法務局)、売買契約書(コピー)、住宅ローンの年末残高証明書(金融機関から送付)、源泉徴収票(会社から受け取るもの)、中古住宅の場合は耐震基準適合証明書または既存住宅売買瑕疵保険の保険証券(旧耐震の場合)です。
これらを揃えて、翌年の2月15日〜3月15日の確定申告期間中に申告します。e-Tax(オンライン申告)を使えば、書類の提出は不要で画面上で作業が完結します。マイナンバーカードとICカードリーダー(またはスマートフォンのICカード読み取り機能)があればその場で送信できます。
申告後、数週間以内に所得税の還付が指定口座に振り込まれます。住民税の控除は、翌年度の住民税から引かれる形で反映されます(還付ではなく減額)。
注意が必要なケース
確定申告後、転勤や転職などの理由で物件を賃貸に出した場合、その年以降の控除は受けられなくなります。自分の居住用でなくなった時点で適用要件から外れるためです。また、売却した場合は残りの控除期間があっても終了します。
ペアローンの場合は、それぞれの名義人が個別に控除を申請します。夫婦でそれぞれ借入を持ち、それぞれが居住者であれば、各自の借入残高に対して0.7%の控除が適用されます。ペアローンを活用している場合は、2人分の控除額を合算した恩恵が見込めます。
千葉の中古マンションで試算してみると
船橋エリアで購入価格3,500万円の中古マンション(1981年以降の新耐震、耐震基準適合証明書あり)を、自己資金500万円・ローン3,000万円で購入したとします。ローン残高は毎年減少するため、初年度の控除額は3,000万円×0.7%=21万円になりますが、借入限度額2,000万円の上限があるため、実際には2,000万円×0.7%=14万円が上限です。
10年間で合計すると最大140万円前後の税還付・減額が見込まれます(実際の残高・納税額による)。この金額は、購入時に支払う仲介手数料や登記費用の一部をまかなえるほどの規模です。住宅ローン控除を活用することで、実質的な購入コストを下げることができます。控除の恩恵を正確に見積もった上で、借入額・頭金のバランスを計画してください。
